目次
8.1 この章の位置づけ
- Baseの評価項目「結論・総合力」
- 結論の明確さ・要約力
- 全体的な統合性
- 読後の納得感・インパクト
- 今後の展望・発展可能性
どんなに優れた分析や提案をしても、「締め」が曖昧だったり、序論と噛み合っていなかったりすると、読者は「結局、何が言いたいのか」ともやもや感を抱きやすくなります。
本章では、論述全体をしっかり総括し、読者が「なるほど、そういう結論か」と納得できる締めくくりを作るためのポイントを詳しく解説します。
8.2 結論の明確さ・要約力
8.2.1 なぜ結論の明確化が重要か
- 読み手の記憶に残す
- 序論から本論まで読み進めた最後に、結論がはっきり示されることで、文章全体の要旨が焼き付く。
- 読者が再確認しやすい
- 要点が整理されていれば、返り読みせずとも「この論文の結論は〇〇だ」と一目でわかる。
8.2.2 要約力を高める工夫
- 主要論点を箇条書きや段落で整理
- 「本稿では(1) 少子化の背景、(2) 高齢化による介護負担、(3) 両者を組み合わせた政策提案、の3点を検討した」など。
- 短い文で結論を言い切る
- 「結論として、本地域における最優先課題は、若年世代の定着と高齢者福祉を連動させた“世代共助モデル”の導入である」と明快に表現する。
- 序論との対応を意識
- 序論で掲げた「問い」や「目的」に対して、どのような答えが得られたかを対応づける。
8.2.3 結論が長くなりすぎないように注意
- 深堀りは本論で
- 結論部分はあくまで「総括+最終的な主張」が中心。新たなデータや理論をそこで持ち出しすぎると、読み手が混乱する。
- 必要なら補足を設ける
- 長い考察や追加データは、付録や脚注で示し、結論部はシンプルに留めるほうが伝わりやすい。
8.3 全体的な統合性
8.3.1 三段構成を再度チェック
- 序論:問題提起・主張の予告
- 本論:データ・分析・提案
- 結論:まとめ・最終主張・今後の見通し
結論では、「本論で扱った論点がどのようにひとつの答えに収斂したか」を示します。途中で扱った論点をまとめて関連付けることで、読者は「なるほど、これまでの内容がこう繋がるのか」と理解しやすくなります。
8.3.2 論の矛盾や飛躍がないか確認
- 矛盾探しの最終チャンス
- 序論では「高齢化対策が主」と書きながら、本論で少子化対策ばかりに偏り、結論でも再び高齢化に話が戻る…といった齟齬がないかを、完成後にチェック。
- 飛躍が生じていないか
- 途中で扱ったデータや提案が唐突に省略され、結論で異なる方向へ飛んでいないかを確認。
8.3.3 章立て・見出しの整合性
- 本文見出しとの整合性
- それぞれの章・節で主張した内容を結論部で意図的に再利用し、「第2節で見たように〜」「第4節で述べたように〜」などと繋げると、文全体の統合感が深まる。
8.4 読後の納得感・インパクト
8.4.1 納得感を高める3つの要素
- 根拠の集約
- これまで示したデータや先行研究が、結論をしっかり支える形で整理されている。
- 反論への再言及
- 第7章で示した問題解決策に対する懸念や反論にも結論部で軽く触れ、「それでも本提案が最適と考える理由」を補足すると読者が納得しやすい。
- 序論からの一貫性
- 「最初の疑問」に対して、結論でしっかり回答する。
8.4.2 インパクトを与える演出
- フレーズの工夫
- 「以上の検討を踏まえれば、私たちは“世代間協働”が次代の社会モデルになると強く確信する」など、力強い言葉で締めくくる。
- 未来志向の言及
- 今後の具体的発展可能性(「数年後には○○の効果が顕在化する見込み」など)を示すと、読者に「ワクワク感」や「この案は将来性がある」と思わせる。
- キャッチーなキーワード
- アンビシャスなタイトルや印象的なスローガンでまとめる場合も有効。ただし、論旨と無関係なキャッチコピーは避ける。
8.5 今後の展望・発展可能性
8.5.1 「ここで終わり」ではない示唆
- 論述課題でも次の課題を提案
- 例:「この施策の効果をより正確に測定するには、今後さらに地域別の人口動態調査が必要となるだろう」
- 学術的な広がり
- 「社会学・経済学・心理学などの多分野連携が今後の研究で期待される」
- 政策実装上のステップ
- 「国会での議論、民間企業との連携、市民運動の発展など、多岐にわたる連携が必要だ」
8.5.2 読者の主体的行動を促す締め
- アクションの呼びかけ
- 「私たち一人ひとりが地域コミュニティに参加し、小さな取り組みから始めることで、少子化と高齢化の同時進行に対抗できるはずだ」
- エンパワーメント的メッセージ
- 結論部で読者を動かすような言葉を置くと、「自分もやってみよう」と思わせる力が働く。
8.6 演習問題:結論・総合力を高めるトレーニング
演習1:結論要約リライト
- 指示
- 既存の論述文(結論部が冗長・曖昧になっているもの)を提示
- 学習者は、論点を整理し直し、「主要論点の総括+最終的な主張」を短い段落にまとめる
- ポイント
- 序論と本論を改めて参照し、ずれていないかを最終確認
演習2:一貫性チェック・ワーク
- 指示
- 自分が書いた論文・レポートの序論、本論、結論を横に並べる
- 「序論で提示した問題意識が結論で回答されているか」「本論のキーポイントがきちんと結論に活かされているか」をチェックリスト形式で確認
- ポイント
- もしずれがあれば、結論で扱うべき追加情報が必要か、あるいは本論で扱いすぎた論点を削るか検討する
演習3:今後の研究・展開を示唆する一文を書く
- 指示
- テーマを設定し、簡単な提案まで作る
- 「この提案をさらに発展させるには、何が必要か?」を一文にまとめる(100字以内)
- ポイント
- 「調査データの拡充」「関連分野の連携」など、視野を広げるヒントを入れる
8.7 学習理論・応用ヒント:まとめとプレゼンテーションの連動
8.7.1 口頭発表・プレゼン時にも結論が大切
- 論述だけでなく、口頭でも最終パートが重要
- 「結論で印象づける」力は文書・プレゼン共通。特にプレゼンでは最後の1分が聴衆の記憶に残りやすい
- スライド構成も同じ考え方
- 序論(問題提起)→ 本論(データ・提案)→ 結論(総括・今後の展望)の三段構成
8.7.2 まとめページのデザイン
- 箇条書きやキーワード
- 論旨を一気に振り返れるよう、最後に箇条書きまとめを用意しておく
- インパクトのある画像やフレーズ
- 過度に装飾する必要はないが、「これで締め」という視覚的効果を狙うと印象が深まる
8.8 まとめ
- 本章のポイント
- 結論の明確さ・要約力:シンプルかつ的確に「最終回答」を示し、序論での問題提起に対応させる
- 全体的な統合性:序論〜本論の内容をもう一度結びつけ、論の流れを完成させる
- 読後の納得感・インパクト:強い言葉遣いや未来展望を示唆して、読み手が「これだ」と思う説得力を演出する
- 今後の展望・発展可能性:論述が「ここで終わり」ではなく、次の段階や研究・応用に繋がる視点をさりげなく示す
- 次のステップ
- ここで全8章が揃い、論述の主要要素(問題理解〜結論)を一通り学習してきました。
- **第9章「Baseを使った相互評価・自己評価」**や、**第10章「実践応用—学習から社会へ」**などで最終的な相互評価や社会実装の視点を深めると、学習効果が一層高まります。
コラム:印象的な締め方いろいろ
1. 名言を引用して締める(あるいは、仮説を実証でき、目的である〇〇を解明できた、として締める。)
- 有名な政策論や哲学者の言葉を冒頭と結論で対比させる形。
- 例:「“子どもは未来そのもの”——本稿の分析で明らかにしたように、少子化対策は日本社会の未来を左右する鍵である。」
2. 物語風エピソードで回収
- 序論で“ある地方都市の具体例”を紹介し、結論で「実はその都市は3年後にこう変わった」と回収する。
3. 短いキーフレーズで断言
- 「結局、本当に必要なのは、世代を超えた協力と持続可能なコミュニティの創造である。私はそう確信する。」
4. “これからあなたはどうしますか?” と読者に問いかける(※ あまり使用しない。)
- 「あなた自身が地域コミュニティの一員として、まず何ができるかを明日から考えてほしい。」
いずれも、論旨に沿った形で使えば読者の心に強く残る締め方になり得ます。ただし、結論で新情報を入れすぎたり、唐突な感動話を入れると浮いてしまうので注意です。
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